偶然見かけた広告のガラス作品に目を奪われ、タピオ・ヴィルカラなる人物を知りました。
彼の名前は知りませんでしたが、代表作”ウルティマ・ツーレ”は知っていました。
「へぇ。この作者だったんだ・・・でも、そこまでデザインは好きじゃないんよ」^^;
ではなぜわざわざ展覧会に行ったか?
それは、彼が50代頃から「ラップランドで暮らしていた」というのが展覧会の紹介に記載されていたからでした。
ラップランドは昔読んだ小説の舞台だったことで関心を抱いていました。
なぜ北極に近いその場所を生活の場として選んだのか?
その地はどんな影響を彼に与えたのか?
これが私の彼への興味であり、広告のガラス作品の美しさの後押しもあり、疑問の答えを知るべく行って参りました^^
↑ココのみ写真可。ウルティマ・ツーレ達。ラップランドの氷が溶ける瞬間から着想を得たそう。
さて、結論から言うと大満足。感銘を受けたところは3つありました。
1つめ
自然素材(木・ガラス・金属・土等)へのリスペクトに溢れている。決して自らのデザインアイデアを振りかざすのではなく、素材を生かす、素材のあるべき姿に導くのがデザイナーの役割と考えていた点が”自然に抗わない”というフィンランドの方の基本価値観を踏襲しているように感じました。
2つめ
ラップランドの暮らしは「都会のエゴイズム、野心の匂いに溺れてしまうことを避け、生き延びるための命綱」であったそう。そして、そこでの静寂・無音・孤独は彼に幸福感を与え、モノ作り(特に手工芸)に再び集中する力となった・・・。こういう側面は人間味を感じるし、名声に胡座をかかず、アーティストとして挑戦をしたことに感心しました。(そしてその後に代表作ウルティマ・ツーレを生み出しています。すごい!)
3つめ
ラップランドでの暮らしは工業化に対する決別ではなく、あくまで「充電」であり、人間的視点を回復させてモノ作りをしていた。また、人里離れた場所で独りよがりになるのではなく、ちゃんと作品制作の仲間である職人達とコミュケーションをとったことや自分が作ったものを使う人々の反応を考えていたところは、非常にバランスが取れた考え方で賢い人だったのだなと思いました。
正直、作品よりも人柄に強く惹かれた展覧会でした^^
もちろん、作品はどれも一級品。特に木を使った作品はアクロバティックな造形にも関わらず、滑らかで均整がとれており、今まで見たことない美しさでした。
6月15日まで東京ステーションギャラリーにて開催されております。
良ければ、ぜひぜひ^^